Bodygram
オンラインショッピングを利用するお客様が、自身の身体サイズを基に、ぴったりのサイズを素早く見つけられるように支援

Bodygram | 2022-2024 | シニアUXデザイナー
ビジョン策定・OKR策定、戦略立案、コンセプト策定、デザインワークショップのファシリテーション、リサーチ、部門横断的な連携、ラピッドプロトタイピング、クライアントとのコミュニケーション
概要
BodygramのシニアUXデザイナーとして、日本の主要ファッションブランドで採用されているAIを活用したサイズ推奨機能のデザインを主導しました。Bodygramは当初、独自の写真ベースのボディスキャン機能を主力とする計画でしたが、日本と米国でのプロトタイピングとユーザーリサーチを通じて、写真撮影の手間が日常的なショッピングにおいて大きな障壁となっていることが判明しました。そこで私は、オンラインショッピング利用者が「統計データに基づく簡易フロー」か「高精度な写真スキャン」かを選択できる「選択肢ベースの体験」へとデザインを転換し、スピードと精度の両方が叶えられるようにしました。この機能はMVPとしてリリースされ、Bodygramをカスタム開発からアパレル企業向けの拡張可能な製品へと進化させ、日本のクライアント獲得と米国市場における新たなビジネスチャンスを切り拓く一助となりました。
背景とビジネス上の課題
Bodygramは、スマートフォンの写真2枚だけで30項目以上の身体測定値を算出する独自のAI技術を提供しており、顧客ごとのカスタマイズ導入で初期の成功を収めた後、より広範な市場のニーズ、特にサイズ選びの迷いが返品率の高さにつながっているファッションEC分野に対応するため、拡張性の高いソリューションを必要としていました。
一方で、多くのアパレル企業には技術リソースが不足しており、システム統合が困難な状況にありました。私たちは汎用的なサイズ推奨ソリューションを導入すれば、導入プロセスを効率化し、返品を減らし、買い物客が自信を持ってサイズ選びを行えるよう支援できると考えていました。
エンドユーザーの課題
オンラインショッピングを利用する消費者は、ブランドごとにサイズ表記が統一されていないことに戸惑いがあり、結果として返品率の高さや購入の見送りにつながっていました。
アパレル企業、特に中小規模の企業は、オンライン上でサイズ情報を効果的に伝えることに苦労していました。
Bodygramは、コンバージョン率を向上させるため、カスタム開発への依存度を減らし、ボディスキャンフローの使いやすさを改善する必要がありました。
18%
オンラインショッピングを利用する人の多くは、服を返品したことがあるか、あるいは返品しようかと考えたことがありました。
38%
返品の38%はサイズの問題が原因でした。
私の役割
シニアUXデザイナーとして、プロダクトコンセプトを策定し、経営陣と緊密に連携しながら、ユーザーニーズ、技術的制約、ビジネス目標のバランスを取るべく、リサーチやプロトタイピングを行いました。また、エンジニアリング、プロダクト、営業の各部門と横断的に連携し、スケール可能なユーザー体験を実現しました。
競合分析
日本と海外のサイズおすすめサービスを分析し、主な課題と差別化要因を特定しました。
主なポイント:
ほとんどのツールは製品の寸法のみを考慮しており、体型は考慮していませんでした。
競合他社のサービスでは、複数の画面にわたって過度な手動入力が必要でした。
Bodygramの強み:最小限の入力(または写真)で高い精度を実現できることでした。
視覚的な補助機能(3Dモデルやブランド別のサイズマッチングなど)は、他社でも採用されていました。




仮説とプロトタイピング
当初はBodygram独自のAIボディスキャン技術を中核的な差別化要因として活用し、写真ベースのフローをメインのユーザー体験とするのが企業戦略でした。シニアUXデザイナーとして私もチームと同じくこの技術に確信を持っていましたが、初期のユーザー反応から、写真撮影の手間が、日常的なショッピングにおいて予想以上に大きな障壁となる可能性があるとは感じていました。
この仮説を検証するため、私は段階的なプロトタイプを設計しました。具体的には、ユーザーがまず身長、体重、年齢、性別といった基本情報を入力して即座にサイズのおすすめを受け取り、その後、より精度を高めるために写真ベースのフローに進むかどうかを選択できる仕組みです。私はこのプロトタイプを日本と米国のユーザーに各自両方のフローを体験してもらい、その感想を共有してもらいました。



調査結果
フィードバックは予想以上に厳しいものでした。ユーザーは写真ベースのフローの正確さを認め、そのアイデアには魅力を感じていましたが、必要な手間(適切な照明、姿勢、撮影条件など)については、日常的な買い物には負担が大きすぎると指摘がありました。実際に日常でどちらのフローを使うかと尋ねたところ、精度が劣るとはいえ、ほとんどの参加者は統計データに基づくレコメンデーションで済ませると答えました。「精度こそ劣るが即座に得られる」という選択肢が、「より正確だが手間がかかる」という選択肢よりも好まれました。

方向転換とMVP
方向転換は、単に写真フローをよりシンプルなフローに置き換えることだけでなく、両方のフローをユーザーに対してどのように位置づけるかという枠組みを再構築するものでした。この決定には、2つの考慮事項が影響しました。プロダクトポジショニングの観点から、写真ベースのAIスキャンはBodygramの最大の差別化要因です。これを一連のフローの背後に隠してしまうと、ユーザーが最初にアクセスする最も重要な瞬間に、プロダクトのアイデンティティが希薄となるリスクがありました。またリサーチの結果、ユーザーが自発的に写真フローを探す可能性は低いことが判明していました。つまり、ユーザーの検討の対象となるためには、最初から前面に提示する必要があったのです。
MVPでは、エントリーポイントに選択画面を導入し、最初から両方のフローを同等の体験として提示しました。ユーザーは迅速な判断が必要な場合は軽量な入力ベースのフローを、精度が最も重要な場合は写真ベースのフローを選択できるようになりました。この決定は、スピードを求めるユーザーと精度を求めるユーザーの両方に配慮すると同時に、最初のタッチポイントにおいて、AIによる正確さを約束するというBodygramのブランドプロミスを強化するものでした。


V2の機能強化とカスタマイズ
デザインワークショップ
MVPローンチ後、私は改善点の洗い出しと更なるチームビルディングのため、V2のデザインワークショップをファシリテートしました。社内のアイデア出しとクライアントとの協業を通じて、UXの新たな改良点を導入し、エッジケースを明確化しました。




UIカスタマイズガイドライン
クライアント間でブランド体験の一貫性と最適なUXを保つため、ビジュアルのカスタマイズガイドラインを作成しました。ここで私はエンジニアチームと連携し、システムの整合性を維持しつつ、UIの柔軟性を確保しました。
成果:このカスタマイズ機能により、アダストリアなどの大口案件の成約が促進され、また他クライアント実店舗でのパイロットテストの実施につながりました。




インパクト
ビジネスインパクト
アダストリアをはじめとする日本のトップファッションブランドに採用され、ECや実店舗で本製品が稼働しました。
私は営業部門と連携してデモ、プリセールス段階でのプロトタイプ作成を行い、また顧客のデザインチームと直接連携して統合計画の策定に携わることで、企業向け案件の獲得に貢献しました。
米国市場への進出を推進し、見込み客との接点をサポートするとともに、国際的な成長に向けた基盤をきました。
製品の検証
写真ベースのスキャンフローを利用したユーザーは、統計データのみのフローを利用したユーザーに比べて、エンゲージメントが数倍高いことがわかりました。この傾向は特に男性ユーザーの間で顕著でしたが、このデータは、写真ベースのフローを主要な選択肢として維持することの戦略的価値を裏付けることになりました。利用者は少数派であっても、利用したユーザーは体験から格段に高い価値を得ていたように考えられます。
既存のカスタム開発製品を新しいユニバーサルエクスペリエンスへ移行することに成功し、Bodygramの単発実装からスケーラブルなSaaSモデルへの移行を支援しました。
デザインシステムの整合性を維持しつつ、エンタープライズ案件の成約プロセスを円滑にするUIカスタマイズガイドラインを策定できました。
振り返り
このプロジェクトを通じて、プロダクトのポジショニングとユーザーリサーチが、いかにして一つのデザイン上の意思決定に反映されるかが明確になりました。「写真優先」から「選択肢ベース」への転換は、単なるUXの変更にとどまりませんでした。それは戦略的な再ポジショニングであり、単一の道筋だけを示すのではなく、人々が買い物をする際の多様性に応えるプロダクトへの進化でした。
次はこうする
デュアルフローの設計はユーザーにとって正しい選択でした。しかし今振り返ると、それはより根本的な課題を回避するものでもありました。Bodygramの差別化要因は、写真ベースのAIボディスキャンで、そのすぐ隣により手軽な統計ベースの代替手段を配置したことで、この設計は、ほとんどのユーザーが同社の基盤となるコア技術を体験することのない状態を事実上招いてしまいました。
データは写真フローを利用したユーザーのエンゲージメントは、数倍も高く、写真による体験は価値が低いわけではないと示していました。ただ価値は高いものの、利用のハードルが高く、それを選択するユーザーはほとんどいなかったということでした。
当時、私は自分の役割を「ユーザーはどちらのフローを好むか」という当面のUX上の課題に限定して捉えていましたが、今なら戦略的な問い——「いかにして、この差別化技術がユーザーにとって真に利用したいものになるか」——にも注力します。私はデザイナーの仕事、特にスタートアップにおける役割には、ユーザーの行動と企業のコアバリュープロポジションが乖離していることを指摘し、チームがそのギャップに向き合うよう促すことも含まれることを学びました。
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